本尊
『日本宗教総覧2001年版』によれば、「特に一尊一仏に限定せず、久遠実成無作(くおんじつじょうむさ)の本仏とする」となっています。しかし、延暦寺内だけでも「薬師如来」「大日如来」「釈迦如来」「阿弥陀如来」等が祀(まつ)られており、何が本尊でも良いようです。
ちなみに天台寺門宗では「本尊に関しては、久遠無作の本仏が本体であり、諸尊諸仏はことごとくその応現(おうげん)であるから、等しく尊信する」としており、天台真盛宗では「阿弥陀三尊(あみださんぞん)」としているなど様々です。
所依(しょえ)の経典等
(1)法華三部経……『法華経』『無量義経』『普賢経』
(2)天台三大部……『法華玄義』『法華文句』『摩訶止観』
(3)浄土三部経……『無量寿経』『観無量寿経』『阿弥陀経』
(4)その他……『大日経』『金剛頂経』『蘇悉地経』等
天台大師の教義
【教観二門】
「教相門」とは、経論の解釈や研究を中心とした教理・理論面です。
天台大師は、釈尊(お釈迦様)一代の教説を「五時八教(ごじはっきょう)」の教判によって判釈し、「法華経こそ純円一実、唯一真実・最勝の経典である」としました。 また「観心門」とは、教相門で明らかとなった教理(悟り)を体得するための修行そのものや諸規定を示したもので、主に『摩訶止観(まかしかん)』に明かされています。
【一念三千法門】
『摩訶止観』に説かれる法門で、一瞬一瞬の心に、あらゆる諸法が具わっていることを示したものです。三千とは、「三千世間」あるいは「三千如是」といわれる一切の諸法です。
【円頓止観(えんどんしかん)】
「止観」とは、教理を体得する修行法のことです。『摩訶止観』には、修行者の能力に応じて「漸次(ざんじ)」「不定(ふじょう)」「円頓(えんどん)」の3種の止観が説かれていますが、天台大師の主とするところは円頓止観です。
この円頓止観(一心三観=いっしんさんがん)によって、一念三千の法理を悟るものです。
伝教大師最澄の教義
最澄は天台大師の教義に基づき、法華円教(ほっけえんぎょう)による一乗思想を打ち立てました。
さらに、当時中国で盛んだった「密教」、悟りを得る方法である「禅(天台でいう止観)」、「梵網菩薩戒(ぼんもうぼさつかい)」を基(もと)とした大乗戒の3つを、法華円教の教えに基づいて総合的に統一し、融合させる「四宗融合思想」を立てました。
慈覚(円仁)の台密
慈覚は「顕密二教判(けんみつにきょうはん)」を立て、『法華経』も理において『大日経』等と同じく密教であるとしました。しかし『大日経』等は理・事ともに密教であり、両者を比較すれば「理同事別」であるとしました。
そしてこの顕密二教判によって、事相の上で「真言密教が勝る(理同事勝)」としたのです。
智証(円珍)の台密
智証は、慈覚の顕密二教判に、さらに独自の「五時教判」を唱え、『大日経』は『法華経』よりもはるかに優れた教えであるという「円劣密勝(えんれつみっしょう)」を主張しました。
安然(あんねん)の台密
安然は、蔵教(ぞうきょう)・通教(つうぎょう)・別教(べっきょう)・円教(えんぎょう)という、天台大師が釈尊一代の説法を教理内容の上から分類した「化法(けほう)の四教」の上に「密教」を置きました。
これによって、真言密教は『法華経』よりも勝れていると主張しました。